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 先日、この記事で後で書くかもと書いたことを。
クドリャフカの順番 +アニメも少し

どこかの大学で、『クドリャフカの順番』での伊原と河内の論争(「知られていなくとも普遍的な価値を持つ創作は存在する」vs「万人が認めたものが結果的に価値を持つに過ぎない」(大意))を受験問題に引用し、「文学作品を評価すること」について思うところを述べよ、という問題が出たそうです。
 
 米澤穂信 (@honobu_yonezawa) 2019年3月27日 午後8:02

或る推理作家の苦悩 ~入試問題での引用と過去問集への収録~

 米澤先生大人気ですね。

 さて、本題。「クドリャフカの順番」で、主人公たちが所属する「古典部」部員のひとりで漫画研究会も兼部している井原摩耶花と、漫画研究会の河内先輩が論争になります。発端は漫研の文集。漫画のレビューを載せたもので、摩耶花は積極的に執筆に参加したが、河内先輩はあまり積極的ではなかった。その文集の売れ行きがあまりよくなく、それを見た河内先輩と河内先輩派の部員が文句を言い出す。それに対し、摩耶花が反論。いつしか摩耶花と河内先輩の論争に。
 「名作」とは何か。それが論題だ。
 摩耶花は、名作は存在すると主張する。知られていなくとも普遍的な価値を持つ創作は存在する。
 河内先輩は、人それぞれがその人の感じ方で「面白い」と思い(作品が面白いのではなく、読み手が決める)、そう思った人が多い作品、長い年月にわたって思われ続けた作品が名作と呼ばれているだけ、と主張する。

 私なら、どんな答えを出そうか。
 ちなみに、ここで語る作品は漫画に限らず、文学作品、音楽、その他創作物全体で考えます。私の場合漫画や文学作品だけだと難しい。(この入試の論点から外れてしまうが)

 河内先輩の言い分もわかる。名作、人気のある作品に触れても、「面白くない」=「私には合わなかった」「私は苦手だ」と思うことは少なくない。面白いのだろうけど、私はそこを面白いと感じられない。苦手なタイプの作品だった、物語は面白いと思うけど絵や言葉遣い・音遣いが苦手、自分には馴染みのない設定・物語でよくわからない、その作品の設定が苦手・地雷、さらーっと読んだ・聴いたので印象に残ってない、その日の体調や気分に左右された…理由は挙げるときりがない。このブログには、私が面白いと思ったものについて書いているので、実は読んだ・聴いたけど面白いと感じられなかったので書いていないものもあります。
(反対に、すごく面白いのだけれども、うまい表現ができなくて書いていないものなども大量にあります)

 でも、自分は面白いと思えなかったけど、この作品のこんなところがすごいんだろうな、こんな所に感動するんだろうな、とも思います。名作の所以なんだろうなと。そんな時、悔しいなと思います。自分も一緒にこれ面白いよね!と盛り上がりたかった。

 摩耶花の意見はその通りだと思う。漫画で考えると、漫画を出版している会社は大手から小さな出版社、同人作品を合わせると星の数ほどある。小さな出版社で、新人かあまり知られていない漫画家で、でも面白い漫画がある。書店もそんなに数多く入荷しない。入手が難しいこともある。でも、面白い。物語や絵に引き込まれて一気に読んでしまった。そんな作品はある。大勢の人が名作と言っている作品でも、声は多くなくてもじわじわと人気を集めている作品でも。映画ならわかりやすいかもしれない。単館上映のあまり知られていない作品が、いつしか話題になってどんどんお客が観に来て、多くの映画館で上映される。賞まで取ってしまった、なんて作品だってある。

 クラシック音楽で考えるとわかりやすいと思う。今は名作として演奏機会も多く、よく聴く作品でも、初演は大失敗だったとか、ある時期までは歴史に埋もれていたが演奏機会を得て広く知られるようになったとか、初演後ある時期まで封印され演奏されることがなかった作品などがたくさんある。政治的な圧力で、演奏を禁じられた作品もある。あまりにも同じ曲ばかり演奏されると「またか」と思ってしまうが、そういう作品こそ、その演奏家の読解や個性が表れやすく、聴くと面白い。「またか」と飽きたような態度を取ってしまうけれども、聴くとやっぱりいい曲だ、魅力がいっぱいだと思う。音楽は聴くだけでなく、自分で演奏できるのも楽しい。その作品の魅力を自分で表現できる。自分で表現すれば、その作品のすごいところがよくわかる。

 ここで、疑問がある。名作だから面白いのか。名作じゃないと面白くないのか。名作と呼ばれれば、多くの人は面白いと認めてしまうのではないか(作品そのものに関係なく、売り方でそのようなやり方をするのは見かける)。
 世間ではいまいちと見なされている作品を面白いと言う人はいる。作者は失敗だったと言っていても、それを面白いと思う人はいる。一体何が名作なのか。

 でも、名作は存在すると思う。名作と言われる作品には、やはり力はあると思う。でも、それを自分が感じ取れるか…それは読んでみないと、聴いてみないとわからない。河内先輩の意見の一部は否定しきれない。個々人、好みや苦手がそれぞれ違うのだから仕方ない。

 自分の主観と、名作という他者の主観。多くの視点から捉えて、でも自分の立ち位置を忘れることなく、バランスよく…これはすごく難しい。でも、様々な作品に触れる上で必要な力だと思う。作品から何かを読み取る力。心を耕すなんて言い方は教育的過ぎるけど、心を耕して作品を読み取り、作品を読み取って心を耕す。面白いという気持ちをどんどん増やせていけたらと思う。面白いという感情は、エネルギーだから。

 本当に難しい…。入試だからもっとまとまった、ちゃんとした答えを書かなきゃいけないのに…これじゃ解けてないよ…。
by halca-kaukana057 | 2019-11-01 23:22 | 日常/考えたこと
 ひとつの時代が終わろうとしている。明日からは新しい時代が始まる。そんな夜に何を聴こうか。クラシックだったら、やっぱりシベリウスか(特にフィンランド指揮者・オーケストラ・演奏者によるもの。今日も聴いていた)。でも、私がクラシックを聴き始めたのはそんな昔の話ではない。十数年程度。私のこの時代を象徴する音楽かどうか…。
 もっとメッセージ性のある、歌を聴きたい。ということで、このアルバムを聴いています。


風を紡ぐ
池田綾子/ソニー・ミュージックダイレクト/2018

 池田綾子さんの久々のアルバム。ずっと待っていました。NHK「みんなのうた」他、様々なテレビ番組などとタイアップした楽曲が次々と出ているのに、CDが出ない。フルをじっくり聴きたい。ようやく聴けました。池田さんの澄んだ優しい歌声は健在。高音の滑らかさ、伸びやかさに驚きます。すごい発声…。声楽を始めて、池田さんの歌声のすごさを実感しました。声域が違うのもありますが…。

 今回のアルバムは、「時間の流れ」を意識した作品が多いなと思います。人との繋がりもありますが、時間、月日の流れがあって、誰かがいて、自分がいる。

 このアルバムの楽曲から、今夜特に聴きたいのが、「時の旅人」「明日への手紙」
 「時の旅人」は、NHK松山放送局 NHK四国4局キャンペーン 四国遍路1200テーマ音楽。ずっとCDで聴きたいと思っていた曲。スケールの大きな曲です。でも、ひとりひとりの歩みが過去から現在、未来へ、大きな年月に繋がっていく。
 長い長い年月の中のひとりひとりの人生の日々。ひとりひとりの人生の毎日があるからこそ、長い長い年月になると思うと、毎日を大事にしようと思えます。時代が変わっても、毎日は続く。

 「明日への手紙」は、手嶋葵さんに楽曲提供したテレビドラマの主題歌。手嶋葵さんの歌も大好きです。でも、池田さんが歌ってくれたら…と思っていました。嬉しい。
 毎日は色々なことがある。辛いこと、苦しいこともある。迷うこともある。それらを抱き、明日への希望を持って進んでいく。とてもやさしい気持ちになる歌ですが、力強く背中を押される気持ちになります。背中を撫でてもらって、ぽんと押してもらえるような。まだ見えてこないかもしれないけど、明日はより夢に近づけるだろう。「明日を描くことを止めないで」という歌詞がじわりと響きます。

 話はずれますが、私にとって平成は、成長の時代でした。子どもから大人へ成長してきた31年。
 でも、大人になればなるほど、停滞したり、後退することもありました。

 話がさらにずれるのですが、平成らしい何かを食べようと思って、今日はティラミスを食べました。ティラミスが流行ったころ、まだ私は子どもでした。美味しそうなケーキと思っていたのですが、その後食べた時苦いなと感じたのを覚えています。でも、今はティラミスを美味しいと感じます。砂糖を入れないコーヒーや紅茶も飲めるようになりました。苦いものも、美味しいと思えるようになりました。100%苦みだけじゃない。苦みもあるけど、様々な味や香りを味わえるようになりました。

 私にとって平成は、様々な意味で「苦み」を「うま味」と感じられるようになった31年だと思います。苦しいことや辛いこと、自分の力ではどうにもならない理不尽なこと…様々な「苦み」も、「うま味」…成長の糧となる、学ぶことがあると思えるようになりました。乗り越えた先に、見えるものがある。

 今も悩んでいることはあります。辛いことも苦しいこともあります。ずっと持続しているものもあれば、波のように寄せては返すものもあります。それらは明日も続いていきます。でも、「苦み」だけじゃない。「うま味」もあるはず。明日は「苦み」の中に「うま味」を見つけられるかもしれない。望むものに近づけるかもしれない。そんな可能性があることを信じる。明日もきっといい日になる。池田さんの歌を聴いているとそんな気持ちになれます。

 この2曲だけでなく、他の曲もいい曲ばかりです。「ドアの向こう」「巡りゆく日々」「言葉の箱船」「えがおのつぼみ」「夢の途中で」…あたたかい気持ちになる曲ばかりです。
 他にも発表している曲があるのですが、アルバムに入らなかった曲も。次のアルバムに入りますよね…?入れてほしい。

 またあした。
by halca-kaukana057 | 2019-04-30 22:45 | 音楽

BBC Proms Dubai 2019 まとめ

 この秋、日本でBBC Promsが開催されますが、ドバイでは2回目のプロムスが開催されました(3月19日~22日)。その録音は、BBC Radio3で聴けます。BBC Proms JAPANに行く方も、行かない方も、本家のロイヤル・アルバート・ホール以外でのプロムスの雰囲気を聴いてみてください。

◇Prom1 (3月19日):Radio3 in Concert : BBC Proms Dubai 2019 - The First Night
 ・ブシュラ・エル=トゥルク (Bushra El-Turk):トメシス(Tmesis)
 ・チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.35
 ・プロコフィエフ:「ロメオとジュリエット」第1、第2組曲(抜粋)
  /五明カレン(Karen Gomyo)(Vn)、ベン・ジャーノン (Ben Gernon):指揮、BBC交響楽団
 チャイコフスキーのソリストの五明カレンさん。東京のご出身だそうで、知らなかった。「ゴムヨ・カレン」とも表記されています。

◇Prom2 (3月20日):Afternoon Concert : BBC Proms Dubai 2019
 ・ブリテン:歌劇「グロリアーナ」 op.53 より 合唱舞曲集
 ・モーリス・デュリュフレ:グレゴリオ聖歌による4つのモテット op.10
 ・ローラ・マヴーラ(Laura Mvula):Love Like a Lion
 ・ボブ・チルコット(Bob Chilcott):We are
 ・ビリー・ジョエル(Billy Joel)(チルコット:編曲):そして今は…(And So It Goes)
 ・フランダース アンド スワン(Flanders and Swann)(Stephen Jeffes , Grace Rossiter:編曲):「At the Drop of a Hat」より 合唱曲集
 ・ローラ・マヴーラ:Sing to the Moon
 ・ベニー・アンダーソン(Benny Andersson)、ビョルン・ウルヴァース(Björn Ulvaeus)(Stephen Jeffes , Grace Rossiter:編曲):ABBAメドレー
 ・アンドリュー・ゴールド(Andrew Gold)(Jonathan Wikeley:編曲):Never Let Her Slip Away
  /ソフィ・イェアンニン(Sofi Jeannin):指揮、BBCシンガーズ、Dubai English-speaking College Chamber Choir
 BBCシンガーズによる、合唱曲回です。
 当初のプログラム:BBC Singers:BBC Proms Dubai: Contemporary Choral Classics
 これと随分違います。プーランクとガーシュウィンはどこに行った。

◇Prom3(3月21日):Afternoon Concert : BBC Dubai Proms 2019
 ・ウォルトン:チェロ協奏曲
 ・ベートーヴェン:交響曲第9番 ニ短調 op.125「合唱つき」
  /ニコラ・アルトシュテット (Nicolas Altstaedt)(vc)
  エリザベス・アサートン(Elizabeth Atherton)(ソプラノ)、イヴォンヌ・ハワード(Yvonne Howard)(メゾ・ソプラノ)、 マーク・ルブロック(Mark Le Brocq)(テノール)、ロデリック・ウィリアムズ(バリトン)、BBCシンガーズ、Dubai Opera Festival Chorus、リチャード・ファーネス(Richard Farnes):指揮、BBC交響楽団
 イギリスもののウォルトンと、プロムス定番曲の第九。Prom2でもそうですが、現地の合唱団も一緒に舞台に立っているのがいいなと思います。

◇Prom4(3月22日):The Last Night of BBC Proms Dubai 2019
 ・ワーグナー:「さまよえるオランダ人」序曲
 ・チャールズ・ヴィリアーズ・スタンフォード:海の歌 op.91
 ・シャブリエ:狂詩曲「スペイン」
 ・ピアソラ(John Lenehan:編曲):リベルタンゴ
 ・アンナ・クライン(Anna Clyne):Masquerade
 ・ヴォーン=ウィリアムズ:音楽へのセレナード
 ・カルロス・ガルデル(Paul Campbell:編曲):Por una cabeza
 ・ヴェルディ:「運命の力」序曲
 ・トマス・アーン(マルコム・サージェント:編曲):ルール・ブリタニア
 ・エルガー:威風堂々 第1番
 ・スコットランド民謡(Paul Campbell):Auld Lang Syne
  /ロデリック・ウィリアムズ(バリトン)、ヨハンナ・ユホラ(Johanna Juhola)(アコーディオン)、BBCシンガーズ、Dubai Festival Chorus、リチャード・ファーネス:指揮、BBC交響楽団
 ラストナイトもやります。昨年のラストナイトで演奏したスタンフォードの「海の歌」が入ってます。2016年のラストナイトで演奏されたヴォーン=ウィリアムズ「音楽へのセレナード」も。声楽ソロは、バリトンのロデリック・ウィリアムズさん。2014年のラストナイトに出演されてました。ガルデルのタンゴ「Por una cabeza」を聴いてみたのですがかっこいい。

 オンデマンド配信期限は、それぞれのページの「○ days left to listen」を参考にしてください。

 ちなみに、本日、今年のプロムスのプログラムが発表されました。
BBC Proms
 7月19日から、9月14日まで開催です。今年は、ヘンリー・ウッド生誕150年。ヘンリー・ウッドが初演した作品がいくつも登場します。あと、今年はアポロ11号月面着陸から50年。プロムスでも宇宙に関する作品や、SF映画の音楽を取り上げます。これがすごく楽しみ。他にも、アニバーサリーイヤーの作曲家の作品も取り上げます。全てのプログラムを見てみましたが、楽しみなプロムばかり。公式ガイドブックは注文済みなので、届くのを待ちます。
 7月になったら、また私選リストをやりたい、やれればいいな。
BBC Media Centre : Media packs : Unveiling the 2019 BBC Proms
by halca-kaukana057 | 2019-04-17 22:57 | 音楽

夜想曲集

 少しずつカズオ・イシグロ作品を読んでいます。今回は、カズオ・イシグロの初めての短編集のこの本。

夜想曲集 音楽と夕暮れをめぐる五つの物語
カズオ・イシグロ / 土屋政雄:訳 / 早川書房、ハヤカワepi文庫 / 2011

 ベネチアのカフェでバンドでギターを演奏していたヤネクは、アメリカ人歌手のトニー・ガードナーがいるのを見つけた。ヤネクの母はガードナーの大ファンで、ヤネクもガードナーの歌が大好きだった。共産圏出身のヤネクは、なかなか手に入らないガードナーのレコードを手に入れて、よく聴いていた。演奏後、ガードナーに話しかけたヤネク。ガードナーとヤネクはガードナーの音楽についての話で盛り上がっていた。ガードナーは妻のリンディとベネチアにやってきていた。リンディにも会ったヤネク。ヤネクはガードナーからあることを頼まれる…。(「老歌手」)



 これまで読んだ「日の名残り」「わたしを離さないで」とは雰囲気が違います。5つの短編、「老歌手」、「降っても晴れても」、「モールバンヒルズ」、「夜想曲」、「チェリスト」が収められています。舞台はイタリアだったり、イギリスだったり、アメリカだったり。イギリスでも、「日の名残り」や「わたしを離さないで」とは雰囲気の異なるイギリス。どれも独立した話ですが、2作品にある共通点があります。これを見つけた時はお互いの作品を別の視点からも読めるようで面白かった。

 副題にあるとおり、どの作品にも音楽が関係してきます。それと、「夕暮れ」。これはただの一日のうちの「夕暮れ」だけでなく、人生の「夕暮れ」でもある。何を持って「夕暮れ」と感じるかはそれぞれの作品の、それぞれの登場人物による。「夕暮れ」をどう解釈するかもそれぞれの登場人物による。昼間と夜の境目なのか、夜に向かっていく時間なのか、夜がやってきてもまた夜明けがくると思えるのか。そして、「夕暮れ」の余韻。夕暮れの時間帯は特に好きな時間だ。空は光と闇、青と橙と黒が混じりあい、月や星が見えることもある。音の伝わり方も昼間や夜と違った感じがする。昼間から夜へは急に変わらない。「夕暮れ」があって、徐々に変化していく。この少しずつの変化にも、それぞれの登場人物の解釈がある。

 特に好きなのが「降っても晴れても」。とにかくコミカル。
 アメリカの古いブロードウェイソングが好きなイギリス人レイモンド。友達のチャーリーの彼女のエミリも好みが同じで親しくしていた。大学を卒業しても3人の交友は続き、チャーリーとエミリは結婚した。レイモンドはスペインで英語講師をしていたが、久しぶりにチャーリーとエミリに会いにイギリスに行くことにした。ロンドンについて、レイモンドはチャーリーから相談を受ける…。
 話のテンポがよくて、様々な事件が起こる。その事件がコメディ映画を観ているかのようなコミカルさ。チャーリーもチャーリーだし(事をおおごとにしたのチャーリーのせいでは…?)、レイモンドもレイモンド。レイモンドが真面目にチャーリーの案を実行していく様がおかしくてたまらない。コミカルな物語の根っこには、チャーリーとエミリが抱えるある問題があった。その問題を心配するレイモンド。心配して、何とか問題を解決しようとするのだが…。この「降っても晴れても」の「夕暮れ」は、ドタバタと静かな夜の間。静かな夜には問題が顔を出すだろうけれども、「夕暮れ」の時間だけはその余韻に浸っていたい。そして、朝が来ることも確信したい…。そんな雰囲気。とても面白い。

 「夜想曲」もコミカルな展開の奥に、問題を抱えた人々の心理が細やかに描かれる。「チェリスト」は他の4作とはちょっと雰囲気が違う。音楽を演奏するとは何か、音楽家として生きるとはどういうことか、才能とは何かが描かれる。人生の「夕暮れ」はいつ訪れるかわからない。自分でも、「夕暮れ」だとわからないかもしれない。他人が見ないとわからないかもしれない。でも、それは他人からの視点であって、自分自身の視点はまた違う。「チェリスト」の主人公(語り手の「私」ではない)の才能とは何だったのか。音楽を演奏する上で、才能はあった方がいいと思う。努力や、教えを請う素直さ、細々とでも継続する力も才能に入るだろうか。でも、才能とは何なのか、どういうものを才能というのか。それを履き違えたら大変なことになる。主人公は、ある女性と出会うが、それはよかったのだろうか…と思う。

 色々な感情が交錯する「夕暮れ」時。そこには音楽があってほしい。余韻を味わうだけで無く、音楽に慰めてもらったり、支えてもらったり、包み込んでもらったり、とにかく音楽と一緒にいたいと思う。毎日何かしらの音楽を聴いている私はそう思う。
by halca-kaukana057 | 2019-01-08 21:44 | 本・読書
 昨日の記事:Hyvää itsenäisyyspäivää!
フィンランド独立記念日に、フィンランド国営放送・YLEのラジオ YLE Klassinenでフィンランドの作曲家の音楽特集をしていたのですが、その時、フィンランド国歌(Maame)と同じ歌詞なのに、定められているフィンランド国歌とは違うメロディーの歌が流れた、という話をしました。あれは何だったんだろう…調べました。

 まず、演奏者から当たってみる。昨日のYLE Klassinenの番組表。
YLE Areena:YLE Klassinen:Päiväklassinen
Isänmaallisia lauluja. (Polyteknikkojen Kuoro/Tapani Länsiö ja Kaartin Soittokunta/Elias Seppälä).
 この曲集です。「フィンランド愛国歌」(ポリテク合唱団、タパニ・ランシオ、 Kaartin Soittokunta,エリアス・セッパラ)。これはCDなのか?探してみました。

 案外、簡単に出てきました。
◇ポリテク合唱団の公式サイト:Polyteknikkojen Kuoro : Suomelle – isänmaallisia lauluja
Discogs : Polyteknikkojen Kuoro, Tapani Länsiö, Kaartin Soittokunta*, Elias Seppälä ‎– Suomelle - Isänmaallisia Lauluja
 CDの詳細について英語で書いてあります。ポリテク合唱団の自主レーベルのようです。
Spotify : Suomelle - Isänmaallisia Lauluja / Polyteknikkojen Kuoro
 Spotifyにあります。アカウントがあれば無料で聴くことができます。フィンランドの愛国歌を集めたCDです。シベリウスの「アテネ人の歌(Ateenalaisten Laulu)」op.31-3、「祖国に(Isänmaalle)」JS98a、「フィンランド狙撃兵行進曲(Jääkärimarssi)」op.91a、「フィンランディア賛歌」、オスカル・メリカントやトイヴォ・クーラの作品もあります。
 このCDの3曲目。「Maamme(我らの地)」という曲です。タイトルは、フィンランド国歌と同じ。作曲は、ユーハン・ルードヴィーグ・ルーネベリ(Johan Ludvig Runeberg)、フィンランド国歌の作詞者です。定められているフィンランド国歌の作曲者はフレデリック・パーシウス(Frederik Pacius)。

YouTubeにもありました。
Maamme (Runebergin sävelmällä)
 CDと同じ、ポリテク合唱団の歌です。パーシウスの方は高らかに、堂々とした感じがありますが、ルーネベリの曲はやさしい感じがする。パーシウス作曲のフィンランド国歌も好きですが、ルーネベリ作曲のもいい歌です。

 フィンランドで、ルーネベリ作曲の方はどう扱われているのだろうか。フィンランド第二の国歌と言われるのはシベリウスの「フィンランディア(讃歌)」。検索しても、圧倒的にパーシウスの方が出てきます。フィンランド語で検索できれば、もっと出てくるのかもしれない。

by halca-kaukana057 | 2018-12-07 22:04 | フィンランド・Suomi/北欧
 よく、本屋で見かけて面白そうと思ったのに、手持ちがなかったとか様々な理由でその時はその本を買えず、そのまましばらく経ってしまった…ということがよくあります。この本もそう。


音楽嗜好症(ミュージコフィリア): 脳神経科医と音楽に憑かれた人々
オリヴァー・サックス:著 / 大田直子:訳 / 早川書房、ハヤカワ・ノンフィクション文庫 / 2014

 このブログに書いてある通り、私は音楽が好きだ。毎日のように、何かしら音楽を聴いている。聴きたいラジオやオンデマンドがあればそれを聴く。テレビのクラシック番組(主にEテレ「クラシック音楽館」)も観る、聴く。買ったばかりのCDや、何度も聴いてお気に入りのCD、音楽配信サービスも使っている。コンサートも興味のあるものがあれば行く。聴くだけじゃなくて、声楽のレッスンに通って歌っている。声楽を始める前は、子どもの頃中途半端に習ったピアノを弾いていた。クラシックだけでなく、様々なジャンルの音楽を聴いている。
 何故そんなに音楽が好きなのか。聴いてしまうのか。私自身にもわからない。別に家族が音楽好きで音楽に詳しかった、というわけでもない。むしろ音楽はあってもなくてもいい環境。子どもの頃から音楽は好きではあった。でも、ピアノは練習嫌いで苦手だったし、音楽の授業でも成績はすごくよかったというわけではない。ただ、音楽が好き、というだけだ。

 この本の著者のオリヴァー・サックスさんは、イギリス生まれのアメリカの脳神経科医。数多くの患者の中には、音楽に様々な反応をする人が少なからずいる。そんな患者たちの音楽との関係について、脳科学、脳神経学の面から書いた本…と書くと難しそうに思えます。実際、本を店頭でちょっとペラペラとめくってみた時には、文字もギッシリ、ページも多い、脳神経学って難しそう?と思いました。しかし、読んでみると面白い。どんどん読み進めてしまう。サックスさんの文章もユーモアたっぷりで面白いし、患者たちの様々な症例に頷いたり、驚いたり。冒頭で、アーサー・C・クラークのSF小説で、音楽と地球の人類について宇宙人が理解できないという話を出していたが、人間にとって音楽とは何なのだろうと、読んでいるうちにどんどん謎が深まってしまう。

 よく、音楽は心を癒す、という。私も音楽に癒される、慰められることはよくある。癒されたい時、慰められたい時はこの曲を聴く、と決まっている。この本でも、様々な病気は持っているけれども、癒されるどころではなく、音楽に助けられている患者の症例があげられている。脳の障害を持ってしまい、記憶することができない、記憶を失ってしまった人だが、バッハのピアノ曲を演奏することや、合唱で歌うことはできる、と。うまく話せない障害の人が、言葉にリズムやメロディーをつけるとうまく話せるようになる。言葉の意味はわからないが、その言葉を意味する歌なら歌える(例えば、クリスマスの意味はわからなくても、クリスマスソングは歌える)。音楽が言語のような役割を果たしている。

 一方で、音楽が生きる上で妨げになってしまうこともある。脳を怪我したり、脳卒中などの病気にかかったあと、それまで楽しめていた音楽が楽しめなくなってしまった、感動することがなくなってしまったという例がある。脳の病気で、元の音楽と音程がずれて聞こえてしまうようになってしまった人もいる。さらには、特定の音楽を聴くと、発作を起こして倒れてしまう、てんかんの発作が起きてしまうという非常に困った例もある。よく、特定の音楽が脳内エンドレスリピートしている、というのもよく聴くが、脳内でただ単に鳴っているのではなく幻聴として聞こえていて、それが止まらない、止められないことも困った一例だ。完全な失音楽症になると、音楽を音楽として認識できなくなる。どんなに簡単なメロディーでも、それを何度聞いても、その曲だと認識できないのだそうだ。こうなると怖くなってくる。
 音楽と脳の関係で、絶対音感や、共感覚のエピソードもある。更には、2000曲のオペラを正確に記憶しているという例もある。とてつもない。

 この本が面白いのは、その症例の場合、脳のどの部分がどのようなはたらきをしているかについて解説している。脳科学、脳神経医学に詳しくなくても、分かりやすく読みやすく書いている。音楽を感じるのは耳だが、それを処理するのは脳。人間の脳は、音楽にポジティヴにもネガティヴにも反応してしまう。音楽は脳から生まれたのか、脳があるから音楽が生まれたのか…ニワトリとたまごみたいな話も思ってしまう。脳の複雑さに驚き、音楽を聴くということも単純なことではないとこの本を読んで思う。音楽は芸術でもあるし、科学でもある。医学でもある。音楽と脳により興味を持つとともに、音楽というものがますますわからなくなる本でもある。
 もう一度書く。人間にとって、音楽とは何なのだろう。こうなると脳科学ではなく哲学になってしまう。でも、脳にとっても、音楽は単純なものではない。いつもは、何かしながら音楽を聴いていることも多いし、音楽を聴きながら眠ってしまうこともある。そんな適当な向き合い方ではなく、もっと音楽に正面から…正面だけで無く、様々な面から向き合おうという気になる。音楽が何なのか、謎は深まるばかりだが、音楽により魅了されることは確かである。私も「音楽に憑かれた人」のようだ。

 この本の中で、オリヴァー・サックスさんの他の著書も登場します。「火星の人類学者」「妻を帽子とまちがえた男」(どちらもハヤカワ・ノンフィクション文庫)など。他の著作も読みたくなりました。

by halca-kaukana057 | 2018-09-18 22:09 | 本・読書
 今年のBBC Proms (プロムス)で、マーラー「交響曲第8番」が演奏されました(Prom11、トーマス・セナゴー:指揮、BBCウェールズ交響楽団 他)。マーラーの交響曲は、少しずつお近づきになっている途中。声楽・合唱付き作品は好きです(声楽なしの作品なら、1、5は好き。6,7番は少しずつ聴いている。9番以降はまだまだこれから)。が、8番はその規模の大きさゆえ、敬遠していました。「千人の交響曲」ってどんな曲だ?と、思っていたのですが、プロムスで演奏された8番を聴いて、声楽も合唱も、オーケストラもきれいな作品だなぁと感じました。これは思ったよりもお近づきになりやすいかも。プロムスの他にも、世界各地…というよりは北欧のオーケストラが立て続けに8番を演奏。オンデマンド配信もあります。これは聴くしかない。

 まずは、スウェーデン。ハーディング指揮、スウェーデン放送響。
Sverigesradio : P2 Live : Östersjöfestivalen: Mahlers åtta
タマラ・ウィルソン、イーダ・ファルク・ヴィンランド、Hanna Husáhr (ソプラノ)
カレン・カーギル(メゾソプラノ)、アンナ・ラーション(アルト)
サイモン・オニール(テノール)、クリストファー・モルトマン(バリトン)、 Shenyang(バス)
スウェーデン放送合唱団、エーリク・エーリクソン室内合唱団、ミカエリ室内合唱団、聖ヤコブ室内合唱団、
Chorista, Hagersten Parish、Adolf Fredrik Church Descant Choir&ユース合唱団
ダニエル・ハーディング指揮、スウェーデン放送交響楽団
(「Chorista samt Adolf Fredriks kyrkas diskantkör och ungdomskör」とあるのですが、訳しきれず、すみません。「アードルフ・フレードリク・ユース合唱団」の「Adolf Fredrik Ungdomskör」に、多分ボーイソプラノ?の合唱団が一緒になっている模様???スウェーデン語は詳しくない…。)
(【追記】BBC radio3にて放送され、英語での表記がわかりました。
BBC radio3 : Afternoon Concert : Baltic Sea Festival - Mahler's Symphony No 8
「Chorista」は、「Chorista, Hagersten Parish」という合唱団のようです。「Adolf Fredriks kyrkas diskantkör och ungdomskör」は、「Adolf Fredrik Church Descant Choir」とそのユース合唱団のことのようです。)


 次はお隣フィンランド。リントゥ指揮、フィンランド放送響。
◇ラジオ音声:YLE Areena : Konsertteja : "Tuhannen sinfonia" avaa RSO:n Mahler-sarjan
◇映像:YLE Areena :RSO Musiikkitalossa : RSO:n konsertti: Mahler-sarjan aloittaa Sinfonia nro 8
カミッラ・ニュルンド、アヌ・コムシ、ヘレナ・ユントゥネン(ソプラノ)
リリ・パーシキヴィ、Tuija Knihtilä(メゾソプラノ)
トゥオマス・カタヤラ(テノール)、スティーヴン・ガッド(バリトン)、ミカ・カレス(バス)
ヘルシンキ・ミュージックセンター合唱団、カンピン・ラウル室内合唱団、Spira Ensemble、タピオラ室内合唱団、
ヘルシンキ大聖堂少年合唱団(Cantores Minores)
ハンヌ・リントゥ:指揮、フィンランド放送交響楽団
 ラジオ音声は後10日、9月23日頃まで。映像はしばらくの間観られます。

 マーラー作品というと、どこかしら暗く陰鬱で、重苦しいかと思いきや、美しいメロディーがあったり、高らかなファンファーレに、壮大に鳴り響くというイメージ。ホルンをはじめとする管楽器はベルアップをして、鞭やハンマーも楽器になる。編成がとにかく大きい。そんなイメージ。8番も、冒頭はオルガンもあり、合唱とオーケストラが一斉に鳴り響く。とても華やか。だが、他の作品にある陰鬱さ、重苦しさが感じられない。空の高みをただ見ているような美しさ。声楽ソロも本当に美しい。マーラー作品の中で、8番はちょっと違うなと感じました。

 構成はというと、第1部はラテン語賛歌「来たれ、創造主たる聖霊よ」から歌詞が取られています。こっちの方が長い第2部はドイツ語で、ゲーテの「ファウスト」第二部から最後の場が取られています。キリストの救済、第2部では愛と浄化を歌っている。交響曲というよりは、オラトリオ、カンタータのよう。そこが、私にとって親しみやすかったのかもしれない。作曲した頃、マーラーはウィーン宮廷歌劇場の指揮者を辞任、愛娘が亡くなり、マーラーも心臓病の診断を受けるなど、辛い立場にあったが、少し年月を置いた初演は大成功。まだマーラーの伝記を読めていないので、もう少し詳しい背景はわからないままですが、6番や7番とは雰囲気が随分違うなと思います。音楽に何かを求めていたのかなぁ…?(推測です)

 スウェーデン放送響のほうは、さすが合唱大国スウェーデン。合唱がすごい。演奏後、曲名はわかりませんがアンコールらしき無伴奏合唱が入っています。フィンランド放送響の方は映像でも観られるのがありがたい。合唱団がいっぱいですね。第2部のラストをじっくりという感じ。どちらも、第2部のテノールのソロが印象に残りました。「マリア崇敬の博士」という役になっているらしい。

 困ったのは、オンデマンド配信には、CDのトラックに当たるものがないので、どこを演奏しているのかの目印がないこと。CDを1枚買った方がいいなぁ。ナクソス・ミュージック・ライブラリーはトラック間に空白ができてしまう。Spotifyは空白はないけど、無料会員なのでPCじゃないとトラック順に聴けない(そのうち、ナクソス・ミュージック・ライブラリーとSpotifyのクラシックでの比較をやろうと思います)。
 聴かずに苦手意識を持っていた作品ですが、聴いてみたらよかった。まだまだわからないことがあるので、色々と聴いてみようと思います。

・プロムスの記事:BBC Proms ( プロムス ) 2018 私選リスト その1 [7月] [随時追記中]
 プロムスは既にオンデマンドは終わってしまったのが残念。
・過去関連記事:マーラーを語る 名指揮者29人へのインタビュー
 8番について語っている指揮者はいたかな?再読。
by halca-kaukana057 | 2018-09-13 23:08 | 音楽
 先日、青森県立美術館「めがねと旅する美術展」について書いたのですが、この夏はもう1回青森県美に行ってきました。シャガールの背景画「アレコ」を展示しているホール・アレコホールで定期演奏会を開いています。その演奏会に行ってきました。
(去年も行ったのですが、記事を書けず。いいコンサートだったんですが、文章力気力その他諸々不足+スランプのため。
演奏会はこれ→アレコホール定期演奏会2017「Incontro」)

青森県立美術館:アレコホール定期演奏会2018「Attitude~2台の弦楽器とピアノで紡ぐ音の絵~」

 弦楽器2台とありますが、チェロの数え方は「挺」だよなぁ…?

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 演奏会は夜。夕方、青森県美へ。ライトアップされていて、昼間とは雰囲気が違う。

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 開演前。アレコ背景画は今なら撮影可です。改装中のフィラデルフィア美術館から長期貸与されている第3幕を背景に、ピアノとチェロの椅子が置かれていました。

 プログラムはこちら。
・ハイドン:バリトン二重奏曲 ト長調 Hob.XII:4
・マルティヌー:ロッシーニの主題による変奏曲
・ガスパール・カサド:無伴奏チェロ組曲 第1曲 Prelude - Fantasia
・ヴィヴァルディ:2台のチェロのための協奏曲 ト短調 RV531
・ダーヴィト・ポッパー:2台のチェロのための組曲 op.16 より第1,4曲
・ドビュッシー:アラベスク 第1番 ホ長調
       :水の反映
・ヘンデル:2台のチェロとピアノのためのソナタ ト短調 op.2-8
  / 藤沢俊樹、村上智美(チェロ)、村田恵理(ピアノ)

 ドビュッシーはピアノソロ。ハイドンはチェロ2艇。マルティヌーはピアノとチェロ1挺。カサドはチェロソロ。後はピアノとチェロ2挺でした。この編成の演奏会には行ったことが無い。ネットラジオやCDでも聴いたことがない。ドビュッシー以外は知らない作品ばかりで、この作曲家がこんな作品を書いていたのかと感心するばかりでした。

 ハイドンの「バリトン」とは、声楽のバリトンではなく、弦楽器のバリトン。ヴィオール属の古楽器。「ヴィオラ・ディ・ボルドーネ」とも言うそうです。ハイドンのパトロンだったエステルハージ候がバリトン奏者で、ハイドンに作曲させたとのこと。今はとても珍しい楽器で、演奏するのもとても難しい。楽器のバリトン、見て聴いてみたいなぁ。ハイドンの作品だとすぐわかる、楽しい作品でした。

 チェロ2艇を、作品の中でどう扱うか。チェロはソロでも聴かせるし、オーケストラでも、室内楽でも欠かせない存在。そんなチェロが室内楽で2艇あったらどうするか。片方が演奏していたメロディーを、今度はもう片方が弾いている。同じメロディーを一緒に演奏すると、普段の室内楽とは違う厚みがある。そんなチェロ同士の受け渡しが楽しく感じました。同じチェロでも、演奏者が違うから音色、音の食管が微妙に違うのもいい。チェロは、明るい音もいいし、短調の暗い箇所、哀愁漂う箇所はチェロが合う。艶のある音、落ち着きのある音、寂れた音。チェロの様々な面を聴けました。
 ピアノも、チェロを引き立て、ピアノならではの澄んだ音で引っ張る。ソロのドビュッシーも、きらきらと揺らめきうつろう音色を楽しめました。

 アンコールはこちら。
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 順序はシューベルトの方が先でした。シューベルトはチェロ2艇とピアノ。ジャン・バリエールはチェロ2艇。バリエールは、検索するとこのタイトルではいくつかの作品がヒットしてしまう。私の記憶では、多分第4番のト長調のソナタだと思います(自信はない)

 青森県美の演奏会については、以前も聴きに行ったのを書いたのがあります。
美術館でコンサート
 この時は、聴衆席は椅子を並べただけで、後ろの席だと演奏者が見えない状態だった。現在は、ひな壇を用意して、そこに椅子を並べているので、後ろに座っていても演奏者は見えます。ひな壇は結構大きいです。その大きなひな壇を設置できるアレコホールの大きさを感じました。
 この時は、BBCプロムスの真っ最中。毎日オンデマンド音源を聴いていましたが、生音は違いますね。室内楽というのもよかった。

その見ているものは何なのか 「めがねと旅する美術展」
by halca-kaukana057 | 2018-09-08 22:25 | 音楽

無伴奏ソナタ [新訳版]

 あらすじを読んで気になって、しばらく前に買って、積読にしておいた本です。そろそろ読もうかなと。


無伴奏ソナタ 新訳版
オースン・スコット・カード:著、金子浩、金子司、山田和子:訳/早川書房、ハヤカワ文庫SF/2014


 異星人に攻撃されている地球。11歳のエンダー・ウィッギンズはバトル・スクールの指揮官。竜(ドラゴン)隊を率いている。指揮官たちの中では最年少だが、戦闘では連戦連勝、成績はずば抜けて優秀だった。そんなエンダーを、大人の大尉や中尉たちは…「エンダーのゲーム(短編版)」。
 生後6ヶ月でリズムと音程への才能を認められ、2歳で音楽性、創造性の天才と評されたクリスチャン・ハロルドセン。両親と離れ、森の中にある一軒家で、自然の音や鳥のさえずりだけを聴いて過ごし、「創り手(メイカー)」として特殊な「楽器」を使って作曲するようになった。何十年も経ったある日、クリスチャンの前にある男が現れ…「無伴奏ソナタ」他11編。


 オースン・スコット・カードは著名なSF作家だそうですが、私は何も知らずに読みました。あらすじを読んで気になっていたのが、表題作の「無伴奏ソナタ」。音楽が題材の作品であることはあらすじからわかったのですが、読んで、まさかこんな作品だとは思いませんでした…いい意味です。私たちは生まれてから、様々な音に囲まれて暮らしているし、沢山の音楽も聴こうとしなくても耳に入って来る。それを、シャットダウンできたら…? これまでの歴史で、作曲家が他の作曲家に師事していたり、尊敬していたり、影響を受けたりするというのはいくらでもある。そういうのが一切なかったら?そして、音楽を創るな、演奏するな、歌うな、と禁止されたら?優れた音楽の才能がなくても、音楽がないのは退屈だ。演奏したり歌ったりできないのもつまらない。体調不良で一時そんな状態だったのですが、少しでもよくなってくると音楽を聴きたくなる。歌いたくなる。私のような凡人でさえもそうなのだから、優れた音楽の才能のあるクリスチャンにとっては、もっと自然なことだろう。クリスチャンが出会う街の人々もそうだ。ちょっと音程が外れていても、音楽を奏でずにはいられない。最後のギターで歌う少年たちのシーンがグッと来る。クリスチャンの音楽は、何があってもクリスチャンの音楽なのだと。

 11の短編集ですが、どれも面白かった。「エンダーのゲーム」はワクワクして、エンダーやビーンの成長が面白くてたまらない。のに、最後、そういう展開になるとは…!「王の食肉」「磁器のサラマンダー」は、最初、これもSF?と思ったが、見事にSFでした。不条理で、グロテスクな作品も少なくないので、そういう作品に慣れていない私には辛い表現もありましたが、面白い。「深呼吸」「四階共有トイレの悪夢」「解放の時」はホラーっぽくもある。「四階~」は完全にホラーですこれ。「死すべき神々」も面白かった。こういう異星人とのコンタクトがあっても面白い。

 どの物語も、面白いけれども、根底にかなしげな雰囲気が漂っている。「無伴奏ソナタ」の「シュガーの歌」のように。地球は、宇宙は、歴史は人間の力ではどうしようもできない。できないけれども、その時の人々が「よりよく」生きようと毎日を過ごしている。科学技術を駆使したり、宇宙へ出て行ったり、最悪な状況を避けようと逃げたり。人間はなんてちっぽけで、どんな優れた才能や能力を持っていて何かを成し遂げても、不条理なことが待っていたりする。それがわからなくても、わかっていても、毎日を生きる。人間は不思議な生き物だとも思う。

 こんな多彩な作品を創造するオースン・スコット・カードがSFの名手というのも納得できました。いいSFを読みました。
by halca-kaukana057 | 2018-06-30 21:49 | 本・読書
 今日、12月6日はフィンランドの独立記念日。独立したのは1917年。今年で100年です。Hyvää itsenäisyyspäivää! 100年目の独立記念日おめでとうございます!!
 この後、日本時間22時(フィンランドは15時)からリントゥ指揮、フィンランド放送交響楽団の独立記念日コンサートがYLEで放送されます。後日オンデマンド配信もあるので、後でゆっくりでもどうぞ。
◇映像:YLE Areena:TV:RSO Musiikkitalossa
Itsenäisyyspäivän konsertti

◇ラジオ:前半:YLE Areena:Radio:Konsertteja Radion sinfoniaorkesterin itsenäisyyspäivän konsertti
後半:YLE Areena:Radio:Konsertteja Radion sinfoniaorkesterin itsenäisyyspäivän konsertti
 前半はロッタ・ヴェンナコスキ、マグヌス・リンドベルイの作品。後半はシベリウス:クッレルヴォです。

 フィンランド各地では、スオミブルーのライトアップがあちこちで行われています。昨日、5日からコーヒーで乾杯したり、6日は祝日でお店はお休み(100年記念でやっているところもあります)前に買い物をしたり…。100年に一度のお祭りです。
 フィンランドの様子は、フィンランドYLEの動画配信でも観られます。
YLE Areena:TV:Suomi Finland 100

 さて、私もフィンランド独立100年をお祝いします。今年に入ってから、こぎん刺しを始めました。津軽地方に伝わる伝統的な刺し子。教えてもらう機会があり、それ以来少しずつですが刺して、小物を作っています。無心で刺している間は楽しいです。
 こぎん刺しの本を見ていたら、フィンランド国旗のような図案があったので、それを刺してみました。
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 コースターです。でも、縦と横の比率が何か変…。違う…。
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 下を折るとちょうどいい…。
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 これじゃあんまりなので、もうひとつ作りました。ひもをつけてオーナメント。ピンクッションにもなります。こちらは縦の横の比率はおかしくないです。
 フィンランド国旗がシンプルなデザインでよかったです…。

 独立100年を記念して、こんな企画も。
Apocalyptica - 'The Symphony Of Extremes' (Official Video)
 フィンランド政府観光局が、フィンランド人のDNAをもとに、音楽をつくろうという企画をスタート。フィンランドは東西の境界線にあり、DNAも多様なのだとか。作曲はApocalyptica(アポカリプティカ)のエイッカ・トッピネン。アポカリプティカによる演奏、そしてこのビデオ。とてもカッコイイです。

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 ケーキを買ってきてお祝いしました。素晴らしい独立記念日になりますように!!

by halca-kaukana057 | 2017-12-06 22:26 | フィンランド・Suomi/北欧

好奇心のまま「面白い!」と思ったことに突っ込むブログ。興味の対象が無駄に広いのは仕様です。


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